奏林舎が森づくりをする上で大切にしていることをSDGsの視点から紹介します。

森づくりの基本方針

  

森林面積が7割近い日本において、森の環境を守ることは持続可能な社会の土台となります。人工林であっても手入れの行き届いた豊かな森は生物多様性が高く、水源涵養機能や災害の防止機能などの様々な公益的機能を発揮します。逆に間伐の遅れた森は林内が真っ暗で他の植物が生えてこないため、土が痩せていて十分な機能を発揮することができなくなります。

奏林舎が木を伐るのは森林環境の保全が目的であり、素材(丸太)を生産することが主たる目的ではありません。間伐する木を選ぶ際には1本1本観察しながら弱った木や傾いた木、病気の木などを優先的に間伐し、生命力があり安定した木を残すようにします。間伐して森の中が明るくなると、残されたスギやヒノキがさらに成長できるだけでなく、草や低木など他の植物が生えてくることで林内の自然環境が改善されていきます。

こうした定性間伐と呼ばれる手法は、現在主に行われている列状間伐(3割間伐であれば2列残して1列を丸ごと伐採する手法)と比較するとコストがかかるうえに欠点がある低質な材の割合が増えるため、短期的な収益性は低いです。しかし定性間伐を繰り返すごとにまっすぐで太い高品質な木が残っていくので、森の長期的な経済的価値が高まっていきます。

地域に密着して間伐を繰り返し、環境的な価値と経済的な価値の高い森を育てていくことが奏林舎の森づくりの基本方針です。

地域材利用とカーボンニュートラル

  

奏林舎で間伐した木材のうち太くてまっすぐな質の高い丸太は提携している近隣の製材所・工務店を通じて、地域内で建築材として活用されています。住宅等に使われた木材は最終的に廃棄されるまで数十年間に渡り二酸化炭素を固定してくれます。また地域内で木材を流通させることで移動・加工に係る二酸化炭素の排出を抑えることが可能です。

また建築材として利用できない曲がった材、細い材、端材などは薪に加工して薪ストーブユーザーや石窯のパン屋さん等に販売しています。薪を燃焼する際に発生する二酸化炭素はもともと大気中にあった二酸化炭素を木が成長する際に吸収・固定したものなので、実質的に二酸化炭素の量は増えていないと見なすことができます。そのため薪を使えば灯油やガスを使っていたら本来増えていた二酸化炭素の排出を削減することができるといえます。

人工林は手入れをしなければ成長が鈍くなり、木自身が呼吸をすることで排出される二酸化炭素の量が無視できなくなってきます。しかし間伐をすることで残された木はさらに太く成長することができるため、また二酸化炭素を固定してくれます。きちんと森の手入れをし、出てきた木材を暮らしの中で有効に活用することは二酸化炭素の吸収&排出削減という一石二鳥の取り組みです。

生分解性資材の利用

奏林舎では間伐する木を選ぶ際に使うテープは生分解性のものを利用し、林内で生じるプラスチックごみの削減に取り組んでいます。

またチェンソーで使うチェーンオイル(潤滑油)には中部エコバイオ社が製造する生分解性オイルを使用しています。従来は鉱物由来のチェーンオイルが使われていますが、奏林舎のような小規模事業体でも年間での使用量は数百リットルになり、それがすべて水源である森の中に飛散することになります。中部エコバイオ社では天ぷら油を店舗等から回収・加工してチェーンオイルを製造しているため、廃棄油の有効活用と土壌汚染の防止に貢献できます。

こうした生分解性の資材は従来品と比較して数割のコストアップとなりますが、奏林舎としては地域の環境を守るための必要経費として採用しています。